梅﨑和子の食育講座 Vol.20〜

食育講座コラム
現代人は体内にダイオキシン、水銀、PCBなどの有害物質を溜め込んでしまいがちですが、それに加えて3・11以降は原発事故による内部被曝の危険性などが加わるという環境下にあります。また、ストレスや運動不足、食べ過ぎにより有害物質の排泄や解毒ができにくい状況にもあります。このようななかで、古くて新しい「塩麹」ブームをはじめとした発酵食品にスポットがあたってきたのはまさに時代のニーズと言えます。

中国や韓国、東南アジアという照葉樹林文化帯にもカビを使った発酵食品はありますが、“麹菌”を使うのは日本だけです。その歴史は1千年にもなり、“麹菌”は日本の「国菌」です。穀類や豆類に麹菌を繁殖させた味噌、醤油、酢、酒、甘酒などの醸造食品は黄麹菌である「アスペルギルス・オリゼー」が使われています。近年報道されている麹の健康効果には①腸内の善玉菌を活性化し免疫力を高め、デトックス効果をアップする②100種以上もの酵素を生産し、栄養成分の吸収を高め機能性成分を生み出す③体内の脂肪やコレステロールの蓄積を防ぐ④血液をサラサラにし高血圧を防ぐ⑤物忘れを防止⑥メラニン色素の生成を防ぎ美白効果を高めるなどがあります。麹菌が生産する酵素が食材で分解されることによって発酵が促され、例えば味噌や醤油においても原料の大豆やコメに含まれる成分の中で、でんぷんを分解するアミラーゼはブドウ糖や麦芽糖に分解して「甘味」をつくり、たんぱく質を分解する酵素のプロテアーゼはたんぱく質をアミノ酸に分解して「旨味」となります。そして、耐塩性の乳酸菌がつくられて原料臭が消え「塩なれ」効果が高まってまろやかな味となるのです。また、生じた乳酸によりPHが下がることにより耐塩性の酵母が増殖してアルコールや有機酸をつくり、味噌の香り成分となります。

本来、大豆は組織が固いので煮ても消化されにくいのですが、発酵生物の作用によって消化の良い食べ物に変身した味噌は健康維持に欠かせない栄養食品となります。あらためて先人が生み出した伝統的な加工法に脱帽です。

他にも発酵が進む過程で大豆のイソフラボンは体内に吸収されやすい形に分解され、味噌の摂取量が多ければ乳がんの発病率が減少したり、閉経後の女性が摂ることによって乳がんの発症率が減少することも報告されています。

味噌に含まれる塩分の濃度が常に問題視されていますが、味噌に含まれる食塩は単独に塩のみを使う場合と違って問題ないという見解が出されています。

味噌の製造過程で増殖する発酵微生物は、原料由来のたんぱく質を分解してアレルゲンを減少させます。

実際にアレルギーの食指導を通して、味噌や醤油は大豆成分が含まれる食品でも問題なく摂取できる人を多く見てきました。味噌は長崎の原爆被爆者の治療食として用いられ、効果が認められたことから放射能による害を防ぐことが広く伝えられています。また、活性酸素を除去して放射線による発がんを抑制したり、放射性物質の排泄を促進する働きのある「ジコピリン酸」の効果も報告されています。江戸時代の『本朝食鑑』にも“味噌は気をおだやかにして腹中をくつろげ血行を良くして「百害の毒」を消す”とあります。朝食にはごはんと具だくさんのみそ汁に漬物という基本食が身体の排泄と循環を促し心身を支えてくれることを昔の人は体験的に伝えています。恐るべし発酵食です。

2013年発行 いんやん倶楽部通信より

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